歳の瀬のきんとん作り  ~ 冬至 ~

2021.12.27

歳の瀬のきんとん作り  ~ 冬至 ~

気づけば師走も半ばを過ぎ、今年も残すところわずかとなりました。心待ちにしていたクリスマスを過ぎると、急に歳の瀬らしい気持ちになり、年内にやらなければいけないことを残しているような、忙しない気持ちになります。クリスマスはいかがお過ごしでしたか?冬休みを迎えたご家庭はにぎやかな毎日となり、お正月の準備に取り掛かる頃でしょうか?

 

二十四節気は、一年で一番昼が短い日、冬至(とうじ12月22日)を過ぎ、本格的な寒さに備える頃となります。七十二候は、乃東生(なつかれくさしょうず12月22日~26日頃)、麋角解(さわしかのつのおつる12月27日~31日頃)、そして、雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる1月1日~5日頃)と、続きます。夕方の早い時間に焼けるような夕焼けを見たと思うと、あっという間に陽はとっぷりと暮れ、凍える夜空には冬の星座が瞬く、とても寒いけれど幻想的で空想的な世界が広がる真冬の長い夜です。そして、そんな寒さの中、自然界では、真夏に紫色の花が終わって枯れたように見えた夏枯草(かこそう・ウツボ草)が芽を出し始め、一年に一度生え変わる、大鹿の雄の角は生え変わり、そして、雪の下では麦の芽が出る、そんな候となります。前の節気、大雪に引き続き、厳しい寒さの中でも自然の営みの環は途切れることなく、春に向けての準備は始まっているのです。

体を温め、消化を助ける、生姜やシナモン、山椒、などの香辛料を食生活に取り入れて、血行不良や水分の停滞を解消しましょう。

そんなこの時期人間界では、外食や宴会が多くなり、食生活が乱れがちです。寒さから心身を守るためにも食事をきちんと摂ることはとても大事なことですが、過食が続くと胃腸に負担がかかり、体内水分の均衡も悪くなり、体調不良につながります。体を温め、消化を助ける、生姜やシナモン、山椒、などの香辛料を食生活に取り入れて、血行不良や水分の停滞を解消しましょう。お正月にいただくお屠蘇には、胃腸を健康に保つため、古来薬として使われるような香辛料が使われていて、この時期、理にかなったものなのです。

“クリスマス後のお正月飾り”

クリスマスが終わったら、お正月。子供の頃、なんて素敵で楽しいこの10日間!と、本気で思っていました。クリスマスの朝、枕元に並んだサンタクロースのプレゼントに感動して、また来年までもきっと良い子にしていよう、と固く誓い、そのプレゼントを大事に抱えながら、はたきやほうきを持って、実際役に立ったかどうかは疑問ですが、大掃除の手伝いをして、大晦日の夜にはお蕎麦をいただき、年が明けると、家族でおせちを囲み新年のご挨拶。そのあとは続くお客様で、毎日おいしいお料理が並び、お年玉や珍しいお菓子などのお土産をいただき、お腹がいっぱいになれば、いつもは仕事で忙しい父までもが遊んでくれる…。夢のよう!と、この時期が過ぎることを悲しく思うほどでした。大人になった今も、そんな習慣を毎年辿りながら、時々、思い出し笑いをして、続けています。

なます、田作り、きんとん、黒豆、焼き物、煮物、と、次々と出来上がってゆくおせち” width=

年末、27日には買い物でした。あの頃は松の内まではお店が閉まり、現在のようにお正月に簡単に買い物ができませんでしたので、様々な山盛りのお買い物を納戸部屋に置き、28日からおせちの準備が始まりました。新巻鮭の解体から始まり、それぞれを漬けたり干したりして、29日は黒豆の準備と昆布巻きの準備と炊き始め、30日はおせちにつきっきりになり、なます、田作り、きんとん、黒豆、焼き物、煮物、と、次々と出来上がってゆきます。何も見ないで次々と作り出されるお料理に、母は魔法使いのよう、と思ったものです。中でも大好きだったのは、栗きんとん作りのお手伝い。砂糖、塩、みりんで味付けして、裏ごしされた、サツマイモとクリの餡の鍋を守るのは、代わりばんこで妹と私です。注意深く、焦がさないよう、弱い火で煮詰めてゆきます。お鍋の中は少しずつ変化してゆき、その照りやへらに返る重さの変わり具合がとても面白かったのです。

 

もう一つ、母のきんとんは、ゆり根きんとんです。ゆり根をきれいにはがし、白くきれいに仕上げるため、色が変わっているところはこそぎ取ります。そして、塩とみりんの味付けで煮て、裏ごしして、さらに煮詰めてきんとんにして行きます。練り上がりの最後の味見も楽しみでした。おせちに真っ白の具はいけないと、最後に抹茶を少々飾ります。なんとも優しいゆり根の香りが土の強さも教えてくれるようなこのきんとんは、子供の頃から大好きで、今でも我が家のおせちの定番です。

“日本食文化の素晴らしさ”

You are what you eat. 食べることは生きること。毎年、年末から年明けにかけては、そんな様々なことを思い出しつつ、食することの大切さと日本食文化のすばらしさを思い、新たな年の健康な食生活を願う数日間です。

皆様もどうぞお揃いで、それぞれのお宅のおせち料理と共に、健やかで朗らかな良いお年をお迎えくださいませ。

 

 

一年で最も夜が長い日は過ぎました。でも、まだまだ、長い夜。お気に入りのパジャマで暖かくして、今夜もぐっすりお休みください。

 

 

染谷雅子

 

 

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

 

作品名:「迎春」

染谷雅子のガラス作品「迎春」

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