パジャマに着替えて…土深い、ミクロの世界 

2024.05.02

パジャマに着替えて…土深い、ミクロの世界 

気持ちの良い季節となりました。目に染みる緑に、ひと時、初夏の麗しい時です。

二十四節気は立夏(りっか5月5日)を迎えます。七十二候は、蛙始鳴(かわずはじめてなく5月5日~9日頃)、蚯蚓出(みみずいずる5月10日~14日頃)、竹笋生(たけのこしょうず5月15日~19日頃)、と続きます。

冬眠から目覚めたカエルたちは川辺や田圃で鳴き始め、季節の変わり目に活動の始まりを告げ、少し遅れて冬眠から目覚めたミミズたちも動き始めます。ミミズが多くいる豊かな土壌では植物が良く育ち、真竹の可愛い筍(たけのこ)がにょきにょきと出て、旬の頃となります。そんな、成長の時を迎える初夏の豊かな土壌に生きる生物たちの活動を表した候となります。 筍 自然の力はぐんぐん成長して、生命力に満ちる季節が到来しますが、日常生活の変化により、心身の均衡が崩れやすい時期です。連休を過ごすことで、新環境での緊張に張り詰めていた気持ちがゆるんだり、不摂生をしやすくなることで体調不良を感じたり…、していませんか?その小さな不調が五月病の原因にもなりかねません。連休中は無理な計画にならないよう、なるべくゆったりと過ごして、この心地良い季節をおおいに愉しみ、心身の健康を育みましょう。端午の節句には菖蒲湯で邪気を払う、という習慣もあります。せっかくのお休み、好きな精油を選んで朝からゆっくりお風呂に入ったり、いろいろなブレンドのお茶の飲み比べと称して、ハーブティの味見をしたり、そんな風に私は過ごしています。 ハーブティ 季節は夏の入り口、自然界は実りの時を待ち、その時までの成熟期に入っています。豊穣をもたらす大地も、雨風と大気の動き、そして日々高くなる陽の力で熟成してゆくのです。それらを助ける大きな力が、地中の微生物の存在です。地中微生物は、他の土壌生物と共生、互いに利用し合いながら、動植物の死骸や排せつ物などの有機物を分解(腐植化)します。この分解によって、土壌の栄養のバランスが保たれ、植物は細根からも栄養分を吸収しやすくなります。微生物が豊富な状態であれば、土壌中の酸素や水の通りは良くなり、植物の生育に最適な土壌pHを保てるのです。さらに、土壌微生物を増やすことで、有機物の分解効率も上がり、栄養分が豊富な土壌を作ることができます。また、病原菌の働きを抑える働きもあるため、連作障害の防止につながります。 土壌 共生する小動物たちの存在も重要です。たとえば、ミミズ。

「ミミズ」と聞いただけで、びっくりする人もいるかと思いますが、人間の文明社会にとって大事な存在なのです。ミミズは下等な動物と思われがちですが、実は高等動物の一種で、人間と同じ臓器、脳、心臓、肺、肝臓、胃、小腸、大腸、肛門、胆嚢、脾臓、腎臓、副賢などが備わっています。大きな違いは目が無いことで、「目が見えず」→「目ミエズ」→「ミミズ」と名付けられたという説があります。ミミズは土を食べ、そこに含まれる有機物や微生物を消化排泄して、それによって、団粒構造といわれる、植物の生育に適した土壌形成に大きな役割を果たしているのです。小さい身体だけれども、大きな存在のミミズたちは、特にこの時期、暦が教えてくれる通り活発に仕事をするのです。

そして、初夏の花々たちの華やかな美しさ、木々の様々な緑の深さ、小さな雑草たちでさえ、この地中からの恵みを受け、時を知り饒舌になるのです。私たちは、その一部、豊かな土壌が育んだ瑞々しい夏の味覚を楽しめるわけです。 植物 子供の頃には何の恐れもなく、土遊びの途中でミミズが出てくれば、土を入れた自分の虫箱でそのミミズを飼っていたことさえあるのに、大人になると、庭仕事の最中、土中からの登場物につい声をあげて驚いてしまいます。あの好奇心旺盛な、どんな不思議でも身をもって解明しようとしていた、勇敢な子供の頃の自分が恋しくなることもありますね。 土遊び 姿におびえることはあっても、ミミズが多くいる大地は豊かな大地、同時に、人間にとっても生きやすい場所であるということは事実です。大地深くのミクロの世界で、億年と静かに行われる再生の儀式を、私たちがせめて妨げることがないよう心がけ、祈るばかりです。

さあ、明日の朝は早速キュウリかな、トマトもいいな、なんて、サラダのメニューを考えつつ、そろそろ眠りにつこうと思います。

 

皆様、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「ステンドグラスフレーム/メキシカンタイル」

染谷雅子のガラス作品「ステンドグラスフレーム/メキシカンタイル」

 

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