パジャマに着替えて…夏の夜散歩

2023.07.03

パジャマに着替えて…夏の夜散歩

雨雲に覆われた灰色の空を恨めしく眺めながら、洗濯の可能性を占う今日この頃。梅雨明けまでもう少し。暦は真夏を迎えます。二十四節気は、今週、小暑(しょうしょ7月7日)を迎えます。七十二候は、温風至(あつかぜいたる7月7日~11日頃)、蓮始開(はすはじめてひらく7月12日~17日)、そして、鷹乃学習(たかすなわちわざをならう7月18日~22日)と続きます。真夏の始まり、梅雨明け近くに吹く風は「白南風」(しらはえ、もしくは、しろはえ)と言い、その湿った南風は天気の急変を招きます。蓮は早朝にその蕾(つぼみ)をほころばせ、清々しい空気をはこびます。そして、天空では、成長した鷹の雛が飛び方を学び、巣立ちが近いことを知らせます。そんな、大気と植物と動物、自然界すべてが溌剌と活動する候となります。

鷹

今の蒸し暑さに、そして、梅雨明け後の本格的な暑さに負けないよう、ちゃんと汗をかける体つくりを心がけましょう。冷たい物の摂りすぎや、冷房で体を冷やし過ぎると、体熱の調整機能が失われ、自律神経障害につながりかねません。結果、発汗の制御ができなくなり、疲れやすくなったり、不眠につながったりします。運動や入浴で汗をかくよう心がけ、出掛ける際には、エアコンの冷気で体を冷やし過ぎないよう羽織るものを持って出かける、など、発汗の調整に気を配りましょう。

冷房対策

そんな、蒸し暑く外出しにくくなるこの時期ですが、昼の時間が長く日没も遅いので、夕方から夜の時間を活用しましょう。雨が降らない夕方は、少し早く夕食を済ませて、歩きやすく、汗を発散させやすい素材の衣類を選び、夜散歩はいかがでしょう。水分補給の準備も忘れずに。砂糖が入っている飲み物は避け、浄水にレモンを絞り、塩をひとつまみ入れたものや、麦茶もいいですね。そんな自分に合った水分補給用のボトルを一つ、汗拭きのお気に入りタオルや手ぬぐいを持って、さあ、出掛けましょう。

夕方

関東地方の小暑の頃、日の入りは19時ごろで、最も遅くなる頃です。日没より少し前に出かけましょう。まだ今日の日の太陽の存在を感じる空と地面の境目、夕焼けのだいだい色は濃くなってゆき、明日の天気を占います。

道沿いのお宅の庭先を借景として歩いていると、アジサイは花房をたくさんつけて、水撒きしてもらったのでしょう、水雫(みずしずく)を滴らせたその青紫色はつやつやと夕焼をうけてうれしそう。明日の朝にはきっと美しく窓際を彩る朝顔は糸巻きのように蕾を閉じてすでに眠りについている様子。

アジサイ

池には蓮(はす)の花。拳を下向きに曲げたように大きな蕾が明日の開花を待って休んでいます。この時期以外は、まるでそこにいることを知られたくないように、存在を消しているのに、時が来ると水底から、夏の朝日を目覚ましのように、大きな葉の間からすっくりと茎をのばして花を咲かせる蓮。その花姿の麗しさはほんの数日間の出来事ですが、とても神秘的です。夕陽の中の蕾でさえ神々しさを放ちます。仏教や密教で極楽の花、とされる意味が分かるような気がします。早起きして見に来なくちゃ。

蓮の花

そして、蓮は無駄のない植物です。花は観賞用としてはもちろん、蓮茶として親しまれています。口中の油分を流してさっぱりさせる、薫り高いお茶です。花が終わり、花弁が落ちた後、たくさんの実を包んだ緑色の大きな蜂の巣のような、花托(かたく)が現れます。蓮台(れんだい)と呼ばれ、その個性的な形状は花材や装飾として使われます。この花托の形、レンコンに似ています。そう、水底の泥の中には地下茎の根が横につながり、レンコンとして私たちの食生活を彩るのです。

蓮台

葉は、そのワックス成分の撥水性により水をはじき、泥や汚れが付きにくく、あの深く優しい緑を保持できるのです。この撥水論理はロータス効果と呼ばれ、様々に利用されています。「蓮は泥から出でて、泥に染まらず」と言われる所以です。更に、粽など、香りづけのため、食材をその葉に包んで蒸したり焼いたりする料理にも使われます。

蓮の葉

そんな静かながら饒舌な植物界を散歩しているうちに、夕空は夜の女王がゆっくり幕を引くように、圧縮されただいだい色の空の淵には藍色がだんだんと混じり合い、名残のような薄い陽の光を残し、濃い、でも冬の濃さとは違う、どこまでも藍色を重ねるような夏の夜空が現れます。

宵の明星、金星が西の空に輝きます。20時ごろ、もう少し上を見れば、はくちょう座のデネブ、わし座のアルタイル、こと座のベガで夏の大三角形が見られます。ベガとアルタイルは七夕伝説の星、織姫と彦星です。夏の星空はこの大三角形を見つけると、天の川沿いにいろいろな星を見つけられます。お天気が良ければ…。

星空

明日も晴れるかしら?梅雨の晴れ間の星空に訊いてみながら、帰りましょう。この後ゆっくりお風呂に浸かり、足腰の疲れをほどき、汗を収めて眠りにつけば、よく眠れること間違いなし。夏の夜散歩は夏の身体作りにぴったりです。

 

今年の七夕は久しぶりに晴れた夜空が見られるといいな、短冊も書いてみようかな…。夏の行事を思いながら、そろそろ眠りにつきます。

 

皆様、今夜もぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「硝子花」

硝子花

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