パジャマに着替えて…衣替え狂想曲

2023.06.19

パジャマに着替えて…衣替え狂想曲

夏がやってきました。

梅雨時の雨冷えの日でも、外へ出た瞬間の空気の匂いや、窓から吹き込む風の熱と重みを感じると、今年も来たなー、と思います。嬉しいような、ちょっと覚悟をしなくてはならないような…。二十四節気は、一年で最も昼の時間が長くなる夏至(げし6月21日)を迎えます。乃東枯(なつかれくさかるる6月21日~26日頃)、菖蒲華(あやめはなさく6月27日~7月1日頃)、半夏生(はんげしょう7月2日~6日頃)と続きます。冬のさなかに芽を出したウツボソウは夏を迎え枯れて、「嬉しい知らせ」「優しい言葉」などの花ことばを持つ優雅なハナショウブの花が咲き、カラスビシャクの別名を持ち、漢方薬としてもつかわれるハンゲが白い花を咲かせます。そんな、植物界の季節の移ろいを表す候となります。

ハナショウブ

夏が来た、とはいえ、まだまだこれからが夏本番。雨模様の蒸し暑さで精神的にも沈みがちになる時や、身体の緊張がうまく取れない時には、まずは一呼吸。大きなため息をついて、気の巡りを良くしましょう。ため息というと聞こえが悪いですが、姿勢を正し大きく腹式呼吸をして、浅くなった呼吸をリセットすることで、自律神経の均衡を整える自然な体の仕組みです。自然界が活発に動くこの季節に身体を添わせることで、旬の力を取り入れるのです。

食事もそうです。この時期の旬の食材は、太陽と大地からの恵みを充分に受けて育っているので、生命力が強く、免疫力も旺盛で栄養価も高いのです。ウリ科やナス科の夏野菜などを積極的に取り入れ、旬を意識した食事を心がけましょう。

野菜

6月に入るといよいよ真夏の準備で、身の回り様子も変わってきます。エアコンを使うようになり、お掃除の仕方が変わり、夏野菜を多く使う台所の様子も変わり、着るものは軽い半そでや袖なしに変わってゆきます。衣替えをして、袖なしの夏色ワンピースや麻のスーツなどを梅雨の合間の晴れ空に干していると、今年も、夏本番間近のしっとりと重い空気と、時に顔を見せる太陽の悪だくみ前のようなチリチリとした日差しに、いくつもの夏の記憶がよみがえります。あー、これこれ、このワンピース、また、今年もこれを着て、どこへ行こうかな、なんて。

ワンピース

現在は建築の技術が上がり、収納方法や湿度の調整が整っているので、あえて衣替えをしない、という方も多いようですが、昔ながらの我が家では収納量に限りがあり、衣替えが必須です。一応、季節に敬意を表して、6月になるまで半そでは着ない主義は今年も貫くことができ、6月初め、梅雨入り前の晴れた日に真夏の服をクローゼットから出して、今は触れたくもないけれど、大好きなウールやカシミヤの冬のコートやセーターに秋の再会を約束してしまいました。いま、私のクローゼットは真夏の訪れを待ちわびる涼しげな色のワンピースが嬉しげに並んでいます。

クローゼット

そして、もう一つは、着物の衣替えです。さすがにぎゅうぎゅうにしまうわけにはいかないので、着物をしまう場所を別に作ってあるのですが、その箱の中身を冬の袷(あわせ)から夏の単衣(ひとえ)に入れ替えます。着物って、重いし、大きいし、しわになってはいけないし、取り扱いがちょっと大変。衣替えは一日がかりのひと騒動です。でも、それにあまりある楽しみと期待感が満載で、気持ちも衣替えしているようです。

着物

浴衣の季節が近づきます。浴衣と帯や小物の組み合わせや、色合わせの妙に出会うと、感心と憧れを感じます。これは、洋服ではあまり感じ得ないことで、なるほど、気に入ったものは次に取り入れたいと思うのです。また、最近は、帯の結び方や帯周りの飾り方も様々で、思い通りの表現方法が工夫されていて、それを助ける便利な小物もたくさんあります。きもの屋さんに行くと、着物を楽に着られる下着や、帯の飾り結びが簡単にできるベルトなど、こんなものがほしかったと思うものがたくさんあり、感嘆しきりです。

和装小物

そんな、洋服の時代の便利な道具も取り入れて、今年も夏の着物のやせ我慢を楽しみたいと思います。暑くても、身体と気持ちをしっかり支えてくれる着物を着ての外出は、ちょっと、気持ちの良いものです。真夏の黒の涼しさに、天花粉いっぱいの身体で、汗知らず、平気なふりして、挑みます。そして、家に戻り、着物を脱いだ時の解放感!ぜひ、味わっていただきたいものです。

着物の女性

去年友達にもらった夏の紗の着物、さあこれを着てどこに行こうか…と、外出予定をあれこれ考えながらの宵、そろそろ眠りにつきたいと思います。

 

皆様、今夜も、ぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「帯留め」

ガラスの帯留め

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