今治3重ガーゼとの出会い

「タオル地でパジャマをつくりたい」という夢を抱き、初めて今治を訪れたのは2015年のこと。

今治の老舗タオルメーカーである株式会社 藤高さんで、偶然手にした3重ガーゼハンカチに心を奪われました。

今治タオルの老舗(株)藤高さんの桜柄のオリジナルタオル

目指したタオル地ではないけれど、ガーゼならではの柔らかさ、吸水性、ジャカード織りの美しい立体感。触れた瞬間、「この生地でパジャマを作りたい!」と強く思ったのです。

藤高さんには、パジャマを作るのに必要な190cm幅の広い総柄生地を織ることができる機械と技術があることも、大きな決め手となりました。

今治タオルの老舗(株)藤高さんのタオル織機

最初にできたのは、2016年のペイズリー柄3重ガーゼパジャマ。

重厚感のある美しいジャカード織りが魅力で、洗い替え用に何枚もお買い上げになるようなご愛用者の多いパジャマとなりました。

パジャマ屋IZUMM 今治ジャガード織り3重ガーゼ ペイズリー柄 メンズパジャマ

伝統を紡ぐ “人” の力

最初の出会いから10年の時を経た、2025年3月。

新作リーフ柄パジャマの制作に向けて、改めて藤高さんの工場を訪問しました。

(株)藤高さんの本社に足を運んだパジャマ屋IZUMMのいずみ社長とスタッフまきこ

今治に現存するタオルメーカーの中では最も長い歴史を誇る藤高さん。創業以来、「技術の藤高」と呼ばれ、5色の糸を使ってフルカラー印刷のような表現ができる「五彩織り」を開発するなど、今治タオルブランドを牽引し続ける存在です。

 

現場で感じたのは、技術も伝統も “人” の手と想いで守り、磨き続けられているということ。

 

あっちを立てればこっちが立たず……という繰り返しで生み出された、最初のペイズリー柄パジャマ。

そのときの熟練工さんから受け継がれた確かな技術と経験は、新しい職人さんのさらに素晴らしいものを作りたいという熱意によって、今回のリーフ柄パジャマへとつながります。

 

「大変だけど財産になる」

“人” の手と想いで紡がれた伝統が、この言葉に象徴されているのです。

(株)藤高さんの工場内の様子 タオル織機が並ぶ

藤高さんと挑む織物づくり

 

3重ガーゼの織りは「ジャカード織り」。

「ジャカード織り」とは、生地に立体的な模様を織り込んだ織物のこと。デザインを糸で直接織り込みながら柄にしていくため、プリントでは出せない奥行きのある表情や高級感が生まれます。

(株)藤高さんのスタッフと新作のパジャマの生地について打ち合わせる様子

第一弾では上品なペイズリー柄を、第二弾となる今回は明るい色合いの多色リーフ柄を選びました。

詳しい知識のない私たちにはわからないけれど、複雑な柄を織物で表現するのは非常に難しいそうで、藤高さんにとっては無茶なお願いだったのかもしれません。

それでも藤高さんは「新しい提案をいただけました」と快く受け止めてくださり、その柔軟さに心を打たれました。

歴史ある繊維業界においても、この新しい発想を受け入れる姿勢こそが藤高さんの強さなのかもしれません。

人が支える技術と伝統

リーフ柄の制作は、第一弾の経験を土台にした積み重ねです。

経糸(たていと)をそのままに、緯糸(よこいと)を変えて多色展開に挑戦。どのような生地に仕上がるかは、色の組み合わせや順番などを考えるデザイナーさんと、それを形にする職人さんの力量にかかってきます。

(株)藤高さんのタオル織機でパジャマ屋IZUMMオリジナルのテキスタイルデザインの生地が折られる様子

たとえば、上着のリーフ柄は、平織り・綾織り・変わり織りなど、いくつもの織り方を緯糸の変化のみで表現しています。

また、パンツの綾織り生地は、光の加減で玉虫のように色が変化するシャンブレーのような光沢のある仕上がりに。経糸と緯糸をかけ離れた色同士にすることで生まれた独特の表情です。

こうして試行錯誤の中で、一歩ずつ形にしていきました。

 

現場で「大変だけど財産になるからやるんです」と語ってくださった職人さんの言葉が、今も忘れられません。

技術も伝統も、結局は人の手と心で育つもの。

訪問して実際にものづくりをする方々に触れたからこそ、その重みを強く実感しました。

素材・染め・デザインのこだわり

(株)藤高さんの機械で糸が染め上げられる様子

糸になる前の綿には油分があります。洗う段階で油分を抜き取るそうなのですが、綿は油分を抜きすぎると固くなってしまう――その絶妙なバランスを見極めるのが職人の技です。

 

そうして出来上がった糸を先に色染めして織るのが今治タオルの特徴。糸そのものに深い色合いが宿り、織り方で豊かな表情を引き出すことができます。

pajamaya IZUMM 今治3重ガーゼ ジャガード織りパジャマ

新作リーフ柄では「明るい軽やかさ」「性別や年齢を問わない」ことを意識。

ただの明るい色柄ではなく、寝るときに着る服 “パジャマ” としての落ち着きやあたたかみがあり、大人に似合う軽やかさを併せ持つ色柄を目指しました。

パジャマ屋IZUMM 今治3重ガーゼ ジャガード織りパジャマ リーフ柄の生地を触る様子

実はこのリーフ柄、模様の部分で生地同士を接結しています。柄の密度が高いとせっかくの柔らかいガーゼ生地が固くなり、逆に柄が少なすぎると接結が弱くなって生地自体の強度も落ちてしまいます。

織り密度や柄の配置を何度も調整し、やさしい肌ざわりを損なわずデザイン性を持たせることにこだわりました。

 

素材の力とデザインの力、そして人の工夫が重なってこそ、ようやく納得の一枚に辿り着けたのです。

新作リーフ柄に込めた想い

愛媛県今治市の海

今治は、少ない雨と豊かな水に恵まれ、織物の産地として発展してきました。

その今治で織られる3重ガーゼは、特別なジャカード織機によって、光沢と立体感を持つ特別な表情を生み出します。

パジャマ屋IZUMM 今治3重ガーゼ ジャガード織りレディースパジャマ

パジャマは、眠るときだけでなく、くつろぎの時間にも着るもの。

起きている時には綿の心地良さと明るい色柄で癒され、ぐっすり眠ることで翌朝はすっきり目覚め、日中のパフォーマンスも上がる――。

そんな日常のちょっとした豊かさを支えるために、肌触りと自然のやさしさを大切にしています。

 

今治で出会った人々の誠実な手仕事と、私たちが目指す眠りの豊かさ。

その両方を重ね合わせて生まれた新しいリーフ柄パジャマ。

訪問を通じて感じた温もりと想いを、ぜひブログの向こう側で感じていただけたら嬉しいです。