パジャマに着替えて…祖母へ

2023.09.18

二十四節気は昼の時間と夜の時間がほぼ同じになる、秋分(しゅうぶん9月23日)を迎えようとしています。この日を境に夜が長くなって行きます。とは言え、夏の名残の暑さはなかなかしぶとく、残暑というには秋に申し訳ないような暑さが続きます。七十二候は、雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ9月23日～27日)、蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ9月28日～10月2日)、水始涸(みずはじめてかるる10月3日～7日)と、続きます。賑やかに稲妻が走り、雷が轟(とどろ)き、大粒の雨が熱い大地をたたく、夏の夕立のような雨は去り、大気は穏やかに静まります。気温が低くなってくるので、虫や爬虫類のような小さな動物たちは土にもぐり、冬眠の準備を始め、稲の刈り入れが始まる水田はすでに水を抜かれて土は乾いている、そんな、大気と大地、そこに暮らす小動物たちの秋の営みを表現する候となります。

少し動きやすくなってきたかと思うと、また、夏を思い出す暑さへ…、と、季節の変わり目として気候が安定しないこの頃、蓄積した真夏の疲れが出やすくなります。その結果、免疫力が下がり、かぜをひいたり、持病の症状が出やすくなったり、肌荒れが出たり、と、問題も起きがちです。楽しみな行事は目白押しだと思いますが、無理をせず、秋の心と体の均衡を穏やかに保てるようにしましょう。そのためにはしっかりと睡眠時間をとることです。寝苦しい真夏の夜から解放され、まだ、重い布団を使うには早く、最も快適な睡眠を得られるこの時期に、一日の行動計画を立て直し、質の良い睡眠時間を効果的に作れるよう、考えてみましょう。寝間着や寝具の衣替えも良いですね。自分に合った素材やデザインなどを取り入れて、睡眠環境を整え、良い眠りから良い日中活動、良い食事、と、快適な連鎖を作れれば、これから迎える冬の準備にもなるはずです。

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真昼の木陰や夕方に吹く風にふと気づかされ、月が出れば、夜空の澄んだ空気や虫の声にはっきりと感じるこの秋という季節。日本人は秋に対し、芸術やスポーツ、読書、そして、食欲、と、様々な活動表現を使いますが、夏の活動的な「動」に対し、「静」の印象が強く、「物想う秋」などとも言い、少し感傷的な感じがします。これはどうも日本人特有のものらしく、アメリカ人に「秋は寂しい気持ちになる季節」などといっても、「それはWinter　Blueでしょ」と言われ、季節に対しても地域性の違いがあるのだな、と思いました。

暑さが和らぎ、なんとなく落ち着きを取り戻し、本を読んだり、音楽を聴いたり、絵を鑑賞したり、観劇をしたり、と、様々に思いを巡らす機会が多くなります。そんな思いは、思考の流れに乗って脳内を巡り、近くや遠く、憧れとつながり、希望や失望、夢につながり、思い出を引き出します。秋はいろいろな人のことを思い出します。子供の頃の秋の行事の一つ一つに母親や父親のことを思い、思わず吹き出してしまったり、涙が出そうになったりするのです。学生時代のことや海外生活の日々も、色鮮やかに残る思い出は優しく懐かしく、悲しい辛い思い出さえいつもその頃の空気や音、匂いや味と共にふんわりと、ついこのあいだのことのように蘇ります。そんな中でも、思い出すのは祖母のこと。つないでくれた手の感触、妹と私に縫ってくれた浴衣の柄、それを着て一緒に行ったお祭りの雰囲気、バイオリンをほめてくれた声、お弁当に持たせてくれたおにぎりの味…。百人一首の札を使って、坊主めくりという遊びが定番の私たち、不思議と祖母がめくる番になるたびにその札柄が坊主なのです。「坊主にお世話になるのが近いからなのかしらね…」なんて、言いながらしゃべれなくなるぐらいまで笑うのです。それを見て、私たちも笑い転げて「もう一回」となるのです。

時々手紙もくれました。封の合わせ部には必ず「つぼみ」と書かれていて、なんでもない日々のことや一緒に出かけた時のこと、季節のことがかいてある優しい手紙です。あの頃、私はちゃんと返事をしたのかしら？そんなに優しく見守ってくれていたのに、時々、反抗して喧嘩したり、約束を守れなかったりもしたな…、なんであんなことしてしまったのかしら、謝りたいな、ごめんなさい。