風は草木の緑を濃くしながら、湿り気を帯びた初夏の気配を運んできます。二十四節気は、万物が満ち始める頃、小満(しょうまん・5月21日)を迎えています。

 

七十二候は、蚕が桑の葉を盛んに食べ始め、養蚕の家では忙しくなる頃の 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ・5月21日~25日頃)、染料としての紅は咲き始めの花を摘むのが良いとされる、紅花が鮮やかに咲き誇る頃の 紅花栄(べにばなさかう・5月26日~30日頃)、そして麦が黄金色に熟し、収穫期を迎える頃の 麦秋至(むぎのときいたる・5月31日~6月4日頃) と続きます。夏の入り口、雨の季節を前に、自然の営みが豊かに活発になり、満ち満ちてゆく様子を表す候です。

 

小満の時期は、走り梅雨(梅雨の走り)と言われるぐずついた天気が続きやすく、湿度が高くなり気温も上昇し始めるため、自律神経の乱れから体調を崩しやすくなります。また、食中毒やカビの発生が増えるため、食品の管理などにも注意が必要です。

ストレッチ

気候の変化による疲労感を解消するためには、運動や睡眠がとても大切です。朝晩の軽いストレッチは自律神経を整えることにつながるのでおすすめです。そして大事なのが睡眠環境。湿度が高い日には除湿や換気をこまめに行い、天気の良い日には布団を干したりシーツを洗ったりして、カビやダニを寄せ付けないようにし、健やかな睡眠時間を手に入れましょう。

 

夏の始めのワクワクする気持ちはあるものの、酷暑と蒸し暑さの始まりを思い出してげんなりするこの時期。毎年、暑さ対策の研究の成果としてさまざまな新商品が次々と現れ、手に取って使ってみることもありますが、研究の進化より暑さの厳しさの方が加速しているような気がします。

かみつれ茶(カモミールティー)

大人なら理解して納得できることでも、子どもにはどうしようもなく、ぐずつくこともある蒸し暑さ。そんな時、母は甘くておいしいはちみつ入りのカミツレ茶を作ってくれました。はちみつの香りと、ふんわり甘いリンゴのような香りが混ざった“おまじないの飲み物”で、なんだか嬉しくなって元気になったものです。

 

その飲み物がカモミールティーというハーブティーだと知ったのは、少し大きくなってからでした。ピーターラビットの物語で、冒険のあと家に戻ったピーターに、お母さんがカモミールティーを飲ませて「早く寝なさい」と言う場面があります。19世紀末のイギリスでは、カモミールは家庭の常備薬のような存在で、胃腸の不調や神経の高ぶり、子どもの夜泣きなど、日常の小さな不調にお母さんがまず手に取るのがカモミールティーだったそうです。なるほど、さすが母です。

 

さて、そのカモミールには主に二つの種類があります。

ジャーマンカモミール(学名 Matricaria recutita または Matricaria chamomilla) と、
ローマンカモミール(学名 Chamaemelum nobile) です。
ともにキク科の植物ですが、性質は少し異なります。

ジャーマンカモミールは中欧~東欧で重宝され、主成分アズレンによる青い精油が特徴です。ローマンカモミールはイギリスやフランスで「庭の薬草」として愛され、子どものためのハーブとしても伝統的に使われてきました。

 

歴史は古く、古代エジプト、ギリシャ、ローマ時代から神聖な植物とされ、薬草や鑑賞用として用いられ、現代でもアロマセラピーで広く使われています。日本へは江戸時代に蘭方医学の書物に「カミルレ」「カミツレ」として登場し、長崎の出島を通じて薬草として輸入され、当時は健胃薬として使われたそうです。明治から大正にかけて医療用ハーブとしての研究が進み、ハーブティーやアロマセラピーの普及とともに広まりました。現在は北海道や長野で栽培が盛んです。

ローマンカモミール

アロマセラピーではジャーマンとローマンのどちらも使用しますが、ジャーマンは作用がやや強く、ローマンカモミールの方が穏やかなので、私はほとんどローマンカモミールを使います。香りも柔らかく、ふんわりとリンゴのような香りがします。また、ローマンカモミールは子どもにも使える安全な精油ですので、安心して取り入れられると思います。

 

スキンケア製品にも使われているように、肌荒れや乾燥の予防も期待できますし、芳香浴だけでも精神安定や安眠の助けになります。お風呂で使うのも穏やかで気持ちが良いです。

 

注意事項として、お風呂には2滴まで。フェイスケアの精油濃度は0.5%、ボディケアは1~3%が目安です。精油1滴は約0.05mlとして、20mlの基材(キャリアオイル)に対し、フェイシャル用は精油2~3滴、ボディ用は4~12滴が適量です。

カモミールの精油

久しぶりにカモミールティーにはちみつを入れ、氷を浮かべて飲んでみました。懐かしい香りとすっきりした甘さに、いろいろな景色を思い出す夜です。母の日は過ぎてしまったけれど…。本格的な夏の暑さの前に、ほっとリラックスの瞬間を運んでくれるこの香り。ピーターラビットの気持ちも少しわかるようです。今日はお風呂にもカモミールの精油を一滴足してみようと思います。

 

皆様はカモミールの精油の香りに何を思うでしょう。
そして、明日はどんな香りと出会えるでしょう。

どうぞぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子

ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「フュージンググラス 小皿