新しい年の始まり、みなさまいかがお過ごしでしたか?
「パジャマに着替えて…」、本年もよろしくお付き合いください。

二十四節気は、その名の通り、寒さがはっきりと姿を現す頃、小寒(しょうかん1月5日)を迎えています。冬至を過ぎ、陽の光は戻り始めているはずなのに、寒さは増していく時です。七十二候は、セリが寒さに負けず、勢いよく伸びる頃、芹乃栄(せりすなわちさかう1月5日~9日頃)、凍った大地の下で、水がわずかに動き始める頃、水泉動(しみずあたたかをふくむ1月10日~14日頃)、雄のキジが鳴き始める頃、雉始雊(きじはじめてなく1月15日~19日頃)、と続きます。「寒の入り」と言われる、冬本番の始まりの静けさの中でも、大地の底では力を蓄え伸びる生命があり、見えない水は動き出し、その静寂を裂く命を繋ぐ声が聴こえる。そんな、寒さと静けさの奥に春の微かな気配が潜む候となります。

寒さがぐっと深まるせいか、肩をすくめて歩く時間が増えたり、気づかないうちに呼吸が浅くなったりするため、身体の芯まで冷えが入り込みやすくなります。そんな時に、暮れから新年にかけての精神疲労や胃腸の疲労が重なると、風邪や胃腸炎などを呼び込んでしまうことになりますので、冬の静けさに身を委ねる一方で、体調には十分に気を配りたい時期です。夕食は軽めにして、お風呂にしっかり浸かり、早めに就寝することで、新陳代謝が促され、老廃物の排出が進みます。
引き続き、旬の根菜類は身体を内側から温めてくれる食材で頼もしい味方になります。煮込み料理など、じっくりと火を通すほど甘みが増し、冷えた身体にやさしく染みわたり、冬にぴったりの温もりを運んでくれます。芹をたっぷり入れて、芹鍋風ポトフなどにしても一興。身体を温めることと老廃物の排出の両方を期待できる、この季節らしい一品です。ぜひ、お試しください。

昨年末から年始と、いつものことながら家族や友人たちとの心ほぐれる宴の時が続き、楽しいながら慌ただしく過ごしました。一息ついて、元日の夜、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートの放映時間頃になると、台所もひと段落、おせち料理の切れ端などをつまみに、ゆっくりワインの時間です。
テレビに映る黄金に輝くホールと満員の観客、微笑みながら演奏するオーケストラのメンバーと輝く楽器、踊るような指揮、美しく活けられた花々…と、すべての均衡がとれた雰囲気のなかで流れるワルツに、ウィーンの音楽魂とその矜持が漂います。もう何年も前のことなのに、目をつぶると、あのホールに入った時、足元の絨毯にハイヒールを沈めた瞬間の感覚や、香水の匂い、シャンパングラスが触れあって鳴らす音、周りの人々が喋る心地よい外国語…、今でもはっきり思い出すのです。ニューイヤーコンサートではありませんでしたが、音楽だけでなくその雰囲気全体に夢心地のひと時でした。
ウィーン国立歌劇場は言わずと知れたオーストリアを代表する歴史的なオペラハウスであり、世界最高峰のオペラハウスのひとつで、1869年にウィーン宮廷歌劇場として開場し、こけら落としはモーツアルト作曲の歌劇「ドン・ジョパンニ」でした。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートは第二次世界大戦下の1939年に、「希望の音楽」としてシュトラウス一家が彼らの作品を演奏したことが始まりで、現在は90か国以上に生中継される世界最大級のクラシック音楽イベントとなりました。

最後に演奏されるヨハン・シュトラウス2世(Johann Strauss II.、1825年10月25日 – 1899年6月3日)作曲の「美しき青きドナウ(An der schönen blauen Donau)」は、1867年に作曲されたもので、ウィーンを流れるドナウ川を讃えるように優雅な川の流れを表すワルツの旋律で、オーストリアの第二の国歌と呼ばれるほど愛されています。序奏は朝の川面のように静かで、主部の旋律は川の流れの動きのように変化し、様々な表情をみせます。終結部は華やかに、水のしぶきが輝くようにキラキラと終わります。
ワルツと一言にいってもいろいろなワルツがあります。もともとは舞曲ですから、その動きに添って流れるものです。3拍の中のどこに重さがあるかで、音楽が変わります。社交ダンスで踊られるようなモダンワルツは1拍目に重みがあり滑らかなステップを導くもの、フレンチワルツは1泊目にアクセントがありながら控えめで流れるよう。ウィンナワルツはテンポが速く、1拍目が軽く、2、3拍目がふわりと流れ、踊りの回転のスピード感に特徴があります。
これが、弾くと難しいですよ。いろいろな先生にいろいろな方法でその奏法をご指導いただくのですが、なかなかどうして、このウィンナワルツのリズムは手に入りません。おしゃれだなー、と思って聴いているウィンナワルツですが、ウィーン魂宿るウィーンフィルの拍感そのものがドナウ川を生き生きと思い起せる源なのですね。

水がわずかに動く水源の様子から始まり、水の流れを音楽にしたようなワルツ。この寒さ極まる時期に、まだ見えない春の気配の動き出しを想いながら、ぜひ、聴いてみてください。
今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。
みなさま、ぐっすりお休みください。
染谷雅子

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「フュージンググラス ペンダント」

