一年で最も昼が短く、夜が長い日、二十四節気の冬至(とうじ1222)がやってきます。北半球では太陽の力が最も弱まる瞬間です。七十二候は、夏に花が黒くなるウツボソウの芽が出る頃、乃東生(なつかれくさしょうず1222日~25日頃)、枝のように育った雄鹿の角が落ちる頃、麋角解(さわしかのつのおつる1226日~30日頃)、雪景色の中でもその下には麦が芽を出す頃、雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる1231日~14日頃)、と続きます。真冬に至り極寒の中でも、生命の環は明らかに規則正しく新しい一歩を進み、再生の時を迎える。そんな、次の季節への予感を表す候となります。

冬至の柚子湯

この時期、本格的な寒さに備えて、しっかり身体を作る必要があります。冷えに負けないよう、身体の外からと中からしっかりと身体を温める生活を心がけましょう。入浴時を使って身体を温め、血行促進を図りましょう。江戸時代から広まった習慣で、「冬至(とうじ)」と「湯治(とうじ)」の語呂合わせから生まれた、ユズ湯は、血行促進や風邪予防、美肌効果などの健康効果も期待され、冬の寒さを乗り越える知恵の一つでした。実際、ユズの皮に含まれる精油成分には皮膚の毛細血管の活性を促し血流を整えることで、肩こりや腰痛、むくみなど、血行不良からくる体調不良の改善が期待できます。また、リラックス作用やストレス軽減作用があることも認められています。ユズだけでなく、今が旬のミカンやカボスなど、柑橘果物の皮を布袋に入れて、冬至の日だけでなく、普段の入浴にもぜひご利用ください。中身は美味しくいただいて、ビタミンⅭをたっぷり摂取してください。風邪の予防にもなります。酸味の強いユズやカボスも絞って、果汁にはちみつを少々加え、お湯で割っていただきます。体の中から温まります。ぜひお試しください。

 

冬至は「夜が最も長い日」でありながら、翌日から少しずつ光が戻ってくる日。それはまるで、絶望の闇の中から希望の光が差し込む瞬間のようです。古事記の天照大神が岩戸から再び姿を現す神話も、この「光の復活」を象徴しているといわれます。古代から「太陽が再び力を取り戻す日」とされ、再生や新しい始まりの象徴と考えられてきました。

そう思うと、冬至という言葉には、そこから想像する寒さの極みの厳しさだけでなく、家族で集う幸せと春へと向かう空気の暖かさすら感じるような気がします。

ヴァイオリン協奏曲「四季」、第4番「冬」(

毎年思うことですが、クリスマスやお正月など、その準備に使う時間やその時間、思い出などはとても暖かく、心地良いものです。そんな、心持ちが音楽になったような曲がアントニオ・ルーチョ・ヴィヴァルディ(Antonio Lucio Vivaldi167834 – 1741728日)作曲、ヴァイオリン協奏曲「四季(Le Quattro Stagioni)」、第4番「冬」(L’Inverno)の第2楽章です。

季節の節目に紹介してきた、この曲もいよいよこの「冬」が最後となりました。前出の「春」「夏」「秋」に続き、その季節の厳しさと穏やかさを弦楽器奏法の特徴を生かし、活き活きと表現されています。第1楽章は寒さの中で身震いしている様子がソロヴァイオリンで表現されます。第3楽章は氷上を歩く様子や冬の外気と春の予感が表されています。

そして、真ん中の第2楽章は寒さから守られた暖かい家の中で過ごす様子が思い浮かぶような暖かく幸せな雰囲気なのです。雪が降る外から窓越しに暖炉の前に集まる家族団らんの時を思い起こさせます。ソロヴァイオリン以外は全員ピチカートという弦をはじく奏法で曲が終わります。そのピチカートも柔らかく、まるで、家族の楽しい会話が聞こえてくるようです。

四季の流れ

「四季」の4曲を聴くと、ヴィヴァルディ自身はきっと夏の暑さや鬱陶しさがとても嫌いで、冬の方が好きだったのでしょう。でも、寒さは嫌いなのでしょう。季節のそれぞれの特徴や雰囲気を見事に表現していると思います。どの曲を聴いても、その空気感や景色が思い浮かべられ、色づき、物語となって動き出します。と、また、妄想世界にまっしぐらの曲なのです。

 

冬至は再生の始まりの日ともいえるでしょう。ヴィヴァルディの「冬」は、その再生を音で描いたように、冷たい風の中に温もりを見出し、春の気配を呼び覚まします。柚子の香りに包まれながら聴けば、冬の穏やかな光を感じることができるはず。私も今年の冬至には試してみようと思います。

 

今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。

みなさま、ぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

<参考>

「冬」ソネットの要約  Wikipedia参照

 

1楽章 アレグロ・ノン・モルト

寒さの中で身震いしている。足の冷たさを振り解くために歩き回る。辛さから歯が鳴る。

 

2楽章 ラルゴ

外は大雨が降っている、家の中では暖炉の前で満足そうに休息。

平和な時間が流れる。

 

3楽章 アレグロ

私たちはゆっくりと用心深く、躓いて倒れないようにして氷の上を歩く。

しかし突然、滑って氷に叩きつけられた。氷が裂けて割れる。

頑丈なドアから出ると外はシロッコと北風がビュービューと吹いている。

今はそんな冬だがもう吹く風には春の匂いが漂い始めている。

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子

ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「フュージンググラス クリスマスオーナメント