夏がやってきます。
5月5日には二十四節気暦での夏の始まり、立夏(りっか)を迎えました。草木が茂り、すべての命にエネルギーが満ちる時です。七十二候は、冬の眠りから目覚めたカエルが川沿いや田圃で鳴き始め、オタマジャクシも見られるようになる頃、蛙始鳴(かわずはじめてなく5月5日~9日)。ミミズの目覚めは少し遅く、ようやく地中よりはい出てくる頃、蚯蚓出(みみずいずる5月10日~14日)。孟宗竹のタケノコより細い真竹のタケノコが地上に出てくる頃、竹笋生(たけのこしょうず5月15日~20日)、と続きます。
天気の展示会のようなこのゴールデンウィークでしたが、皆様、いかがお過ごしでしたか?この時期は大気が安定せず、この連休のようなお天気もたびたび発生します。気温の乱高下や気圧の乱れのため、体調不良を引き起こしやすくなります。更に、ゴールデンウィークの生活習慣の乱れが加わり、食事や睡眠へまで影響すると、疲労が蓄積して、不調が長引いてしまうこともあります。五月病の状態にならないよう、心身をいたわり、しっかり栄養補給をして十分な睡眠を確保してください。
もちろん、五月晴れの日は本当に緑美しく気持ちの良いこの季節です。散歩や軽い運動などで時間を過ごすのには最適です。自然の恵みを五感で享受して英気を養ってください。
この季節の旬食材は、やはり、カツオ。カツオは春と秋の2回旬を迎える珍しい魚です。秋(9月頃)には「戻り鰹(もどりがつお)」が旬を迎え、その味は脂がのって濃厚なものですが、この季節は「初鰹(はつがつお)」の時期で、脂が少なくさっぱりとした味わいが特徴です。お勧めは、カツオのカルパッチョサラダ。藁焼きでたたきを作るのはちょっと大変なので、カツオの表面はバーナーやフライパンで香ばしく焼き(焼きすぎ注意)、新タマネギやオオバ、ニンニクなどと一緒に薄切りにしたカツオを並べ、レモン果汁多めの醤油たれ、または自然塩、とオリーブオイルをかけていただきます。五月の味をぜひお試しください。
この、緑が目にまぶしい季節に、ツツジやボタン、シャクヤクなどの明るい花色が色取りを添えます。中でも花屋の店先で見る真っ赤なカーネーションは、季節を強く認識させます。今週末は母の日です。母がいなくなって、長い月日が経ちますが、赤いカーネーションを見ると今でも胸がキュンとします。
母にもらった様々なもの、慣習や嗜好など、もちろん大好きで大事にしていますが、音楽を与えてくれたことは本当に感謝しています。本人も小さい頃からバレエを習っていたり、いろいろな演奏会へ行ったりしていたそうです。私が出演する演奏会も父と一緒に必ず聴きに来てくれました。そして、ずっと、モーツアルトが好きでした。
「若い頃は、チャイコフスキーやブラームスやベートーヴェンなどのドラマチックな交響曲が好きで、あまりモーツアルトは聴かなかったのよね。でも、歳をとると変わるわね。」と言って、仕事中にはモーツアルトのピアノ曲が流れていました。うーん、なんだかわかるなその感じ。最近聴くのは、ピアノ曲が多いような…。
言わずと知れた、天才作曲家、ウルフガング・アマデウス・モーツアルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756年1月27日 – 1791年12月5日オーストリア)は、父親の音楽教育の影響もあり、幼少期から驚異的な音楽の才能を発揮しました。彼は3歳でチェンバロを弾き始め、5歳で作曲を行ったと言われています。幼少期のモーツァルトは、父と共に、ヨーロッパ各地を巡る演奏旅行を行い、パリやウィーン、ロンドンなどの都市で演奏を披露しました。また、彼は幼少期から音楽を「分析」する能力を養っていたとも言われ、単に楽器を演奏するだけでなく、音楽の構造を理解することに長けていて、これが彼の卓越した作曲能力につながったのです。
ピアノのための変奏曲、「きらきら星変奏曲」はモーツアルトが1781年~82年頃にかけてウィーンにて作曲されたピアノのための変奏曲で、正式には「フランスの歌曲『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』による12の変奏曲 K.265 (300e)」といいます。この曲は、現在「きらきら星」として知られる旋律を主題にしており、12の異なる変奏が加えられています。ピアノの技巧を活かした構成になっていて、各変奏は異なる技法や表現を用いて、華やかなものから静かなものまで、さまざまな雰囲気が楽しい変奏曲です。特に、第8変奏は短調になり、曲の雰囲気がガラッと変わり、続く変奏曲への新しい扉が開くようです。演奏家によっても雰囲気が違うのも面白いです。
現在、「きらきら星」として歌われる詩は19世紀に入ってからイギリスの詩人によって書かれたもので、本来の曲「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」は、18世紀にフランスで流行した恋の歌でした。詩がとてもかわいくて、娘が母親に恋心を語るのです。初めての恋しい気持ちを母に打ち明け、最後は「恋人なしで生きてゆくことはできるの?」と終わります。こんなこと、母に打ち明けることなんてなかったな、また、話したいな、なんて、母の日を前に思うのでした。皆様もぜひ、いかがですか?お母さんと一緒の幼い日を思い出しながら。
今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。みなさま、ぐっすりお休みください。
染谷雅子
参考 「ああ、お母さん、あなたに申しましょう」(参照 Wikipedia)
原詩(フランス語)
Ah ! vous dirai-je, maman,
Ce qui cause mon tourment ?
Depuis que j’ai vu Clitandre,
Me regarder d’un air tendre ;
Mon cœur dit à chaque instant :
« Peut-on vivre sans amant ? »
日本語訳(意訳)
ああ! お母さん、言わせてください
私の苦しみの原因は何なのか?
優しいまなざしのクリタンドルを見て以来、
私の心はいつも問いかけるのです:
「恋人なしで生きていくことはできるの?」
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「ステンドグラス チューリップペンダント」