一年中で最も活力にあふれ、太陽の熱量を存分に受け、暑さがますます強まる真夏の時に差し掛かろうとしています。二十四節気は小暑(しょうしょ7月7日)を迎えようとしています。七十二候は、白南風(しらはえ)と言われる梅雨明け近くに吹く暖かく湿った南風が吹く頃、温風至(あつかぜいたる7月7日~11日頃)、ハスが大きな蕾を軽やかに、華やかにほころばせる頃、蓮始開(はすはじめてひらく7月12日~16日)、鷹の雛が飛び方を憶えて巣立ちの準備を始める頃、鷹乃学習(たかすなわちわざをならう7月17日~21日頃)、と続きます。夏の盛りの暑い風が吹く中、その季節を知り咲く花や成長する生き物たちを表す候となります。
本格的な暑さを前に夏日が続くこの夏ですが、暑さの本番はこれからです。暑さが体内にこもると体内の渇きが進み、その状態が続くと自律神経の失調を来たし、血流の停滞を招き、体内に栄養が行き渡りにくくなります。結果、疲労感や睡眠不足、栄養失調へと進み、それが悪循環となり、いわゆる、夏バテへと陥るのです。汗で失われる分、適切な水分摂取を心がけ、発散と摂取の均衡をとることで渇きを防ぎ、体内に熱をこもらせないようにしましょう。身体の水分を巡らせる作用のある旬の食材を取り入れた食事でもしっかりと補いましょう。
引き続き、夏野菜が豊富なこの季節、嬉しいですね。ゴーヤはいかがですか?東南アジアを原産とするゴーヤは、江戸時代にはすでにニガウリ(苦瓜)として食されていたようです。沖縄では古くから栽培されていて、地域の代表的な野菜として親しまれています。
ゴーヤチャンブルとして、炒めたものが一般的ですが、火を入れない料理は、ビタミンの損傷も少なく、下ごしらえをすれば苦みも穏やかになり美味しくいただけます。薄切りにしたゴーヤを塩もみして水分を絞り、お好みの油と塩昆布や鰹節で和えたものはお膳の一品として色取りを添えます。さらに、一緒に和える食材をツナ缶や錦糸卵などにすると、栄養バランスもとても良いものになります。暑さの中の苦みの刺激をどうぞお試しください。
今年の梅雨は真夏の到来を思わせるような空模様です。でも、遥かに聞こえる雷鳴と共に、時折降る梅雨明け間近の雨は、緑深い庭を濡らし、草いきれと太陽に焼かれた土が息を吹き返すような匂いと一緒に、真夏への扉をゆっくり押し開ける合図のように屋根を叩きます。そんな日は、家の中でその雨音を聴きながら、来る夏をいかに過ごすかの策を練るのも一考です。そんな時のお供にはピアノ曲がぴったりです。鬱陶しい気分になりがちな梅雨時、ピアノの音はそんな空気を断ち切って、清々しい気持ちにしてくれるような気がするのです。ショパン作曲、「雨だれの前奏曲」はぴったりです。
フレデリック・フランソワ・ショパン(Frédéric François Chopin 1810年3月1日異説あり~1849年10月17日 ポーランド)はピアニストであり作曲家としても活躍した、ロマン派音楽を代表する存在です。神童と言われた彼は、7歳で最初の作品を作曲し、8歳で公開演奏を行い、ウィーンでの音楽活動後、20歳代でパリに渡り、以前ご紹介のリストなどの有名な作曲家との交流をしつつ、社交界での演奏活動を経て作曲家としての地位を確立します。男装の麗人として有名だった女流作家ジョルジュ・サンドとの大恋愛は彼の創作活動に大きな影響を与え、数多くの作品が作曲されました。小さい頃から病弱で結核を患っていたと言われるショパンはわずか39歳でこの世を去ります。
「雨だれの前奏曲」は、1836年~39年、彼が26歳~29歳の頃、にかけて作曲されたピアノ独奏曲集「24の前奏曲作品28」の第15番目の曲です。左手で奏でられる一定のリズムがしとしとと降る雨音を思わせることから、後世の人に名付けられたものです。詩的で穏やかな中にも切なさを含む旋律がピアノという楽器の奏でる音の効果によって、雨の日を過ごす心に寄り添ってくれます。他にも第4番や第20番などが私は好きです。
この作品集、各曲は数分の短い曲ですが、しっとりとしたノクターン風の曲から激しい速い曲まで、多彩な情感を凝縮したようで、全曲40分ほどを聴くと、まるで壮大な物語を見るような、そんな豊かな気持ちになるのです。ぜひ、ピアノと共に、雨模様を聴き、雨音を見る、そんな体験をお試しください。
今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。
みなさま、ぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「 フュージンググラス ピアス 梅雨の終わりの雨の音 」