一年で、最も昼の時間が長く、夜が短い夏至(げし6月21日)を迎えます。夏本番も刹那、この日を境に、日照時間は短くなり季節は秋へと向かうのです。宇宙の摂理の中、人が作る暦ですもの。七十二候は、冬に芽を出したウツボソウが枯れる頃、乃東枯(なつかれくさかるる6月21日~25日頃)、ハナショウブが花咲く頃、菖蒲華(あやめはなさく6月26日~30日頃)、ハンゲ(別名カラスビシャク)が生える頃、半夏生(はんげしょうず7月1日~6日頃)と続きます。太陽の厳しさにさらされる植物たちの夏の景色が表される候となります。
気温に加え湿度も高くなるこの頃は、汗が蒸発しにくいので、体内水分代謝が滞りやすくなり、熱がこもりがちになります。汗をかくことは熱の発散と体内代謝を整える大切な機能で、自律神経を整える働きにつながりますので、夏本番を迎える前に、軽い運動や、入浴時間を使って、汗が出やすい身体づくりをしましょう。 もちろん食事も大切です。体内水分の循環を促すキュウリやナス、オクラなどの夏野菜は旬真っ盛り。トマトも路地ものが出回り、熟して美味しいものが手に入りやすくなっています。トマトは夏の宝物、水分補給にもなりますし、ビタミンやカリウムなど栄養豊富で、体内水分や塩分の排出に重要な役目を果たします。リコピンやβカロテンは油に溶けやすいため、オリーブオイルなどを使うと吸収率が高まります。また、リコピンは朝の摂取で吸収率が高くなる、という研究もあります。 そこで、完熟トマトの簡単ガスパチョを朝食にいただきましょう。トマトを多めにしてニンニクを少しとキュウリなどの夏野菜と一緒にミキサーへ。ポイントはピーマン。パプリカやピーマンが少し入ると本格ガスパチョ感が高くなります。スペインで食したガスパチョを思い出します。塩コショウで味をつけ、仕上げにオリーブオイルを回します。元気に一日を過ごせるはずです。ぜひ、お試しください。
今年も半分が過ぎようとしています。時が過ぎるのがあまりに速い。速すぎます。それも歳を重ねるごとに速度が増す。小さい頃には長かった一日も、どんどん短くなり、あっという間に一日が終わり、一週間が終わり、季節が動き、年が進む。それは、子供時間分の一日と大人時間分の一日は分母が違うわけで、歳取るごとに一日価が薄まってゆく、ということなのでしょうか。夏至を迎える頃になると、少し寂しい気持ちになります。夏がするりと逃げてしまうような気がして。子供の頃は一日千秋の思いで楽しみにしていた夏休みでしたが、大人になって、夏本番とはいえ、実は秋に向かっているということに気づいてしまったわけです。とはいえ、今年は今年、元気に夏を楽しみたいと思っています。
蒸し暑い夏の始まりに、アントニオ・ヴィヴァルディの「四季(Le Quattro Stagioni)」から「夏 L’Estate」はいかがでしょう?以前、春分に紹介した、バイオリン協奏曲「和声と創意の試み」第1番「春」に続く、第2番です。 夏の静かな蒸し暑さや嵐の緊張感とその破壊力、そして、暑い日差しの気怠さや疲労感、不快感などの雰囲気が音楽で表されています。
歓びと彩りに満ちた「春」とは一転、夏は少し深刻で、どちらかというと、夏のつらく厳しい部分を表現しているようです。思うに、ヴィバルディは夏が嫌いだったのではないか、と。例えば、照りつける太陽のもとぐったりしている人や羊、嵐への恐怖、ブヨやハエの音、雹による穀物への被害、などなど、夏の良い所は出てきません。でも、聴いているとなんとなく夏を想いすっきりするのです。
小学生の時、この曲の感想文を書くことが夏休みの課題の一つになったことがありました。何度も聴いて、いろいろ考えて、「ヴィバルディは夏が嫌いだったと思います。」と書いたことをはっきり覚えていて、どうしてこんなに楽しい夏のことを書いてくれなかったのだろうと思いました。大人になり、夏のさまざま表情を知り、弾く機会も得ると、なるほど、確かにあの頃思ったことは間違いなかったな、と思い、と同時に、そこに流れる激しく、でも暑さを洗い流してくれるような、涼やかな夏の水の動きを感じるのです。夏の鬱陶しさを表現しているのに涼しさも感じるという、ヴィバルディの技なのでしょう。いかがでしょう、音楽で涼む夏、ぜひ、聴いてみてください。
今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。 みなさま、ぐっすりお休みください。
染谷雅子
<参考>
「夏」 ソネットの要約(Wikipedia参照)
第1楽章 アレグロ・ノン・モルト – アレグロ かんかんと照りつける太陽の絶え間ない暑さで人と羊の群れはぐったりとしている。松の木も燃えるように熱い。カッコウの声が聞こえる。そしてキジバトの囀りが聞こえる。北風がそよ風を突然脇へ追い払う。やって来る嵐が怖くて慄く。
第2楽章 アダージョ 稲妻と雷鳴の轟きで眠るどころではない、ブヨやハエが周りにすさまじくブンブン音を立てる。
第3楽章 プレスト(夏の嵐) 嗚呼、彼の心配は現実となってしまった。上空の雷鳴と雹(ひょう)が誇らしげに伸びている穀物を打ち倒した。
ガラス作家・アロマセラピスト
染谷雅子 ギャラリーはなぶさ
https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「 れんこんのナイトアロマランプ 」