青空の少ない皐月でした。そして、続いて梅雨の季節を連れてくる使者のような水無月の始まりです。二十四節気は芒種(ぼうしゅ65)を迎えます。穂先にとげとげの針のような芒(ノギ)をつける穀物、コメや麦などイネ科の種を蒔く頃を指しますが、実際には田植えが始まる頃です。七十二候は、稲につく害虫を食べてくれる益虫のカマキリの幼虫が泡のような卵鞘から次々誕生する頃、螳螂生(かまきりしょうず65日~10日頃)。水辺ではホタルが飛び交い幻想的な光を放つ頃、腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる611日~15日頃)。青梅が熟し薄黄色に色づく頃、梅子黄(うめのみきばむ616日~20日頃)と続きます。あちらこちらで田植えが始まり、美しく、そして命を繋ぐ大切な時に、共存するべき小さな命が産まれて次の世代へと輝く時、そして、自然からの贈り物、熟した梅の実で梅仕事に励む私たち。そんな水の月の始まりを思わせる候となります。

梅仕事

梅雨の走りの頃、蒸し暑さを覚える一方、雨が降れば温度も下がるため、寒暖差も気になります。特に就寝時には温度の変化に気づかず薄着で風邪をひいてしまったりします。体熱交換が自然にできるような寝具を選ぶことも大事です。最近は様々な冷感寝具が出ていますので、試してみるのもいいですね。そして、水の月にはやはり身体の水の巡りも注意が必要ですので、雨降りだからと言って家にこもることなく、身体を動かすことも忘れずに。

 

そして、旬の食材で、来る暑さに備えて、しっかり栄養をつけてください。この時期お勧めは、アジやイワシなどの青い魚です。煮ても焼いても揚げても、どんなふうに調理しても美味しくいただけますが、刺身でいただける新鮮なものが手に入ったら、アジやイワシのマリネはいかがでしょう?タマネギやミョウガなどの旬の野菜と一緒にお好みの酢を使って、マリネします。それだけでも美味しくいただけますが、マリネサンドイッチはいかがですか?マリネした魚をレタスや一緒にマリネした野菜とともに、軽くトーストしたバケットに挟んでいただきます。マリネ液が沁みたパンと、爽やかな酸味の魚がびっくりするほど合うのです。私にとっては、ストックホルムの島々が浮かぶ藍色の海が濃く映る青空を思い出す味です。良く冷えた白ワインと一緒にどうぞお試しください。

鯵のマリネ バケットのせ

6月は夏を迎えるワクワクと梅雨を迎えるモヤモヤが交錯する頃。祭日や休日もないしね。そんな中、きらりと光る行事は父の日。母の日よりちょっと地味な感じがありますが、それは、世のお父さん方の家庭における地位のなせる業でしょうか…。

父を見送り20年も経ちますが、この季節になると思い出すことがあります。私の父は多くを語る人ではありませんでしたが、音楽が好きで演奏会は必ず聴きに来てくれました。そして、シューマンの「トロイメライ」が好きでした。父を見送り、後ろ髪惹かれるようにその時住んでいたメキシコに戻ると、メキシコの少し寂しい陽気さに満ちた空気はつらい気持ちを慰めてくれるようで、日常生活をきちんと生きる大切さを思い出させてくました。そんな時、あるコンサート行き、心の蓋が開いたような清々しい涙があふれたのが、ピアソラ作曲の「アディオス ノニーノ」です。

メキシコの街並み

アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla 19211992アルゼンチン)は、作曲家でバンドネオン奏者でもあり、タンゴにクラシックやジャズの要素を融合させ、芸術音楽としてのタンゴ、「タンゴ・ヌエボ(Tango Nuevo)」を生み出しました。「アディオス ノニーノ」は1959年、彼がニューヨーク在住時に、父親の訃報を受けながらも、旅費がなく帰国することができず、失意の中で作り上げられた曲です。父親を思い出し、その厳格さと優しさと存在の大きさがタンゴのリズムで表現されるのです。哀愁漂うバンドネオン、優しさを思い起させるバイオリン、他にピアノ、ギター、コントラバスで構成させる5重奏の演奏形式が一般的です。

アコーディオン バンドネオン

ピアソラの父親に対する様々な思い、良いことも悪いことも、がちりばめられ、最後は深い感謝の思いと鎮魂を祈るように余韻を残し収束します。コンサートではその他にもピアソラの作品がいくつか演奏されたのですが、この曲が演奏されていた間、ふと、身体が浮かび上がるような心持で、父の言葉や様々な表情がスライドショーのように思い出され、おこがましくも、ピアソラと私に父親の存在として共通の念があることを知りました。というか、きっと、みんなの共通なのでしょう。

 

と、そんなことを思い出す、父の日です。おとうさんを想って、ぜひ、聴いてみてください。

 

今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。

みなさま、ぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子 作品名:「ステンドグラス ココペリのナイトアロマランプ」点灯前

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子 作品名:「ステンドグラス ココペリのナイトアロマランプ」点灯後

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子

ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「ステンドグラス ココペリのナイトアロマランプ」