夏の手ぬぐい使い   ~ 処暑 ~

2021.08.23

夏の手ぬぐい使い   ~ 処暑 ~

暦の上では秋とはいえ暑い日々、と思えば、梅雨の終わりのような雨降り、と気温差の激しいこの頃ですが、一雨ごとに季節は動き、秋の気配は少しずつ近づきます。

 

二十四節気は処暑(しょしょ8月23日)を迎えました。暑さが徐々に和らぐ頃とされ、残暑はまだ留まりますが、朝夕に秋を感じる節気です。七十二候は、綿柎開(わたのはなしべひらく8月23日~27日頃)となり、天地始粛(てんちはじめてさむし8月28日~9月1日頃)、禾乃登(こくものすなわちみのる9月2日~6日頃)、と続きます。

赤く色づく綿花” width=

夏に咲いた綿花が赤く色づき、花弁が落ちた後、実は弾けて、種を覆う白い綿をのぞかせ、大気や大地の温度は下がり、秋めいた雰囲気が満ちてくる頃となります。その大地からは稲や麦などの穀物が実り始め穂先が重くなりだします。残る暑さの中にも、次の季節への準備が進み、実りの秋の訪れを表す頃となります。

 

身体には夏の暑さからの疲れが溜まっているところに、気温の変化などが影響して、体と心の不調が心配な時ですし、冷たい物の摂取や、冷房の影響などで、身体の冷えによる疲れも蓄積する頃です。食事を簡単に済まそうとすると、手軽な麺やパンなどに偏りがちになりますが、糖質過多になると体内の余剰糖質がたんぱく質を劣化させ、体内酸化につながります。季節の食材として、豆類やキノコ類の食材を取り入れて、糖質に偏らず、たんぱく質を効率よく吸収できるようにして、夏の心身の疲れを引きずらないようにしましょう。

豆類やキノコ類の食材を取り入れた味噌汁” width=

綿の実がはじける頃ですが、真夏の頃には綿に可憐な花が咲きます。花言葉には、「優秀」「繊細」「偉大」など。また、「私を包んで」と、可愛い言葉もあります。7月から8月にかけて花をつけますが、咲き始めは白く、だんだんと日が経つにつれ、桃色になりさらに濃く変化します。そして、花が落ちて種が付くと、その種を守るように成長する白い綿が、外殻を押し破り弾けて現れるのです。夏の終わり、8月30日の花はこの綿の花です。

だんだんと日が経つにつれ、桃色になりさらに濃く変化する”綿の実 width=

この綿の木から収穫される実が、綿布へ製品化されるのです。

衣料にはもちろん、寝具や家具など、今の生活には欠かすことのできない木綿ですが、あの可憐な花と愛嬌があるとも言える、特徴的な綿の実を見ると、その健気さが伝わります。

今の生活には欠かすことのできない木綿

綿の栽培と、その利用方法は世界中で紀元前から記録が残されています。日本には紀元後、中国から伝来したそうですが、この国の気候が綿種の栽培に適さなかったため定着せず、その後、幕府の栽培奨励もあった、江戸時代に広く一般的になりました。扱いやすく、手に入りやすくなった綿布は、それまでの麻や葛に代わり、またたく間に庶民の生活の必需品となり、今に至るのです。世界における綿の栽培や綿布の歴史はとても古いのですが、日本における綿の歴史は比較的短いのです。

綿布楽しみの一つである手ぬぐい

綿布楽しみの一つに手ぬぐいがあります。木綿布が普及した江戸時代にはすでに日常的に使われていた手ぬぐいですが、そのころは浴衣などの反物の端切れや着古した浴衣などの布を使っていました。埃除けに頭にかぶったり、着物の襟の汚れを避けるためにかけ襟にしたり、風呂敷替わりや、もちろん、布巾や雑巾、また、包帯のように使ったり、下駄の鼻緒のすげ替えにも使われる、万能布として庶民の家庭に普及していました。

今は綿糸の折り方などで手ぬぐい用に作られた丈夫な綿布を使い、華やかに季節の柄が施され、四季折々一服の絵のように楽しむこともできます。

“お気に入りの”手ぬぐい

ただ、やはり、使ってこその木綿手ぬぐい。水分の吸収が良く、乾くのも早く、汚れも落ちやすい、木綿の手ぬぐいは、今でも家庭内で大活躍です。手を洗えばタオル替わり、台所では、蒸し料理の蒸気よけや水切り、そして、布巾や台拭きに、さらに使えこめば雑巾へと長く使えます。特にこの季節、汗対策として首に一巻きしていると、滴る汗も吸い取られ、少しは家事もやる気になるもの。

私の夏のお気に入り手ぬぐいは、以前の歌舞伎座最後の夏記念の花火柄のものと、老舗反物扱い竺仙の麻の葉模様の藍染め手ぬぐい。両方とも目の詰まった良い織の綿で、染も注染、すでに長く使っているので、肌なじみも良く、しょっちゅう登場の手ぬぐいです。

 

布小物を扱うお店やお土産屋さんなどで素敵な柄の手ぬぐいを見つけると、つい、手に取ってしまいます。また、手ぬぐい専門店に行けば、季節の趣味の良い柄に、好みを探して長い時間を費やしてしまいます。至福の時間です。

 

まずはハンカチ替わりから、皆様も、手ぬぐいを楽しむ生活、いかがですか?

 

そして、この時期の私流の使い方。秋のはじめとは言え、まだまだ夜は蒸し暑く、と思うと、朝方には急に冷えることもあり、気づかず布団からはみ出した体が冷えてしまうことがしばしば。手ぬぐいを簡易腹巻代わりに、お腹にゆったり巻いて寝ると、汗も吸い取ってくれるし、お腹も冷えないのです。綿の熱を拡散する作用と温める作用、両方の効果で、寝相の悪い私でも安心です。

 

お気に入りのパジャマと手ぬぐいで、今夜も心地よく、ぐっすり良い夢を。

 

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:誕生石色のリング・ピアス

染谷雅子のガラス作品「誕生石色のリング・ピアス」 染谷雅子のガラス作品「誕生石色のリング・ピアス」

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