秋の気配が近づくころ…、とはいえ、それは暦の上でのこと。でも、よーく探してみると、夕方の少し涼しい風や虫の声、早朝の青が深くなった空の色と雲の形…と、見つかる小さな秋もあります。二十四節気は、草木に白くビーズのような露が宿る頃、白露(はくろ97日頃)、を迎えようとしています。七十二候は、温度が下がる夜明けに、水蒸気に満ちた大気で作られる朝露が葉の上で白く光る頃、草露白(くさのつゆしろし97日~11日頃)、長い尾を振って歩くセキレイが鳴き始める頃、鶺鴒鳴(せきれいなく912日~17日頃)、春先にやって来たツバメは南へ飛び立って行く頃、玄鳥去(つばめさる918日~22日頃)、と続きます。まだ暑さが残る日中でも、夜には気温が下がり、大気中の水蒸気が清々しい露となり植物に宿り、鳥たちは時を知り季節を生きる、静かな、でも確実な季節の移ろいを感じる候となります。

白露 鶺鴒鳴(せきれいなく9月12日~17日頃) セキレイが尾を振って歩くころ

今年の夏は本当に厳しい暑さとなりました。9月に入っても記録となるような酷暑日が続き、外出時にはいつまでも暑さとの対決のような気分で出かける日が続いています。暑さや紫外線、冷房の影響は蓄積されてしまい、疲労を感じることもありますね。体力の回復にはきちんとした睡眠と食事が基本です。環境が許せば、昼寝を取り入れるのも良いでしょう。そして、食事は脂質を控え、良質のたんぱく質を摂取することで、ホルモンや酵素、免疫物質などの生成を促し、体力と精神力の回復を図りましょう。

そんなときは、魚です。脂がのって美味しい時期を迎えている、サンマやサケ、カツオは秋の代表的な旬食材。特にサンマ。今年は豊漁が期待できるようで、手に入りやすいため、たっぷりいただきましょう。焼いたり、煮たり、また、刺身でも良し、といろいろな変化が楽しめるサンマです。みそ煮にすると日持ちがして、数日間楽しめます。

そして、その味噌ですが、実はこの時期「新味噌」の時期なのです。昔ながらに味噌づくりは「寒仕込みの土用越し」といわれ、冬の寒い時期に仕込んで暑い夏を越して発酵が進み、食べ頃となるのです。初秋の味覚として、秋刀魚の味噌煮をぜひお試しください。

白露 秋刀魚 さんまの味噌煮 新味噌の時期

残暑が長く厳しさを感じる初秋とはいえ、少しだけ息もしやすくなり、自分の体調に集中していた神経は、周りの生き物たちの動きにも気を配れるようになります。ずっと昼間は静かだった鳥たちのさえずりに気づき、夕方は虫の声も聴こえてきます。こんなに暑くて、四季の変化を感じにくくなったとはえ、やはり自然の力には滞りはありません。

毎年秋、920日~26日までは動物愛護週間となり、動物の愛護と適正な飼養について考える期間となります。ヒト以外の生物のことを考えるって、楽しいですね。それぞれの生き物たちが持っている時間の感覚や、大げさだけれど、生死感や欲求ってどんな何だろう…、と、また妄想してしまいます。

白露 ツバメが飛ぶ季節 9月20日~26日までは動物愛護週間

以前、交響曲の中で鳥の声を表現している部分などを紹介したことがありますが、他にも動物を愛しい目で観察し、それを音楽で表現している作品がたくさんあります。

例えば、様々な動物たちが登場する、サン・サーンス作曲、「動物の謝肉祭」、動物たちが大活躍する、プロコフィエフ作曲「ピーターと狼」、クマンバチの鬱陶しい羽音が聴こえる、リムスキー・コルサコフ作曲「くまん蜂の飛行」、可愛らしい猫がワルツを踊っている、アンダーソン作曲「ワルティングキャット」…など、どの作品も、作曲家が動物の姿や性格を音で描こうとした試みが感じられて、聴いていてとても楽しいです。音楽家は動物も愛する心と観察眼を持っているのですね。

 

以前ご紹介した天才ピアニストでもある作曲家、フレデリック・フランソワ・ショパン(Frédéric François Chopin 18101849 ポーランド、フランス)作曲のワルツ第6番 変ニ長調 作品64-1「子犬のワルツ(Valse du Petit Chien)」をご紹介。

この曲は恋人のジョルジュ・サンドが飼っていた子犬が自分の尻尾を追いかけてくるくると回る様子を描いていて、短い曲ですが、軽快で愛らしい旋律には子犬が無邪気に遊んでいる光景が見事に表現されています。 ジョルジュ・サンドは、フランスの女流作家であり、ショパンの情熱的な恋人でした。彼女の小犬がこの曲のモデルとなったことからも、彼女の存在がショパンの創作に大きな影響を与えていたはずです。でも実は、作曲当時は二人の関係が冷め始めていた時期で、複雑な感情に潜む、つかの間の楽しい時だったとしたら、明るく聴こえる曲調ゆえに少し寂しさも感じます。いかがでしょう?

撫でられる犬

ペットを飼っていれば、いつもよりじっくりと動物たちの様子を見てみてください。また、暑さも緩み、散歩に出かける際には、いつもより注意深く生き物を観察してみると、面白い音が聞こえてくるかもしれません。早速明日にでも…、涼しければね。

今日も眠りにつくとき、目覚めるとき、素敵な音が聴こえますように。

みなさま、ぐっすりお休みください。

 

染谷雅子

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子

ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:フュージンググラス ペンダント 「夏の思い出」