朝晩の冷え込みは深まり、暦の上では、秋深く冬間近。二十四節気は霜降(そうこう10月23日)を迎えました。ところが、いまだに夏日の日があったり、気温差が10℃近く違う日があったりと、今年はこの時期に至っても、日和の予想がつきません。七十二候は、霜始降(しもはじめてふる10月23日~27日頃)、霎時施(こさめときどきふる10月28日~11月1日頃)、楓蔦黄(もみじつたきばむ11月2日~6日頃)と続きます。秋が進み、冷たい空気に驚いて、朝目覚めると庭の樹々の葉には白く砂糖化粧したお菓子のように霜が降りていることに気づき、外に出れば、傘をさすのも憚れるような霧雨が体を濡らします。でも、気づけば森のカエデやツタは美しく色づき、黄金の深秋。そんな、大気の変化とそれに伴う植物の変化を表す候となります。
夏の暑さに辟易し、一息ついたところで、すっかり体がなまってしまって、体を動かすことが大儀になっていませんか?真夏は温度が高く少しの動きでも汗が出て、発汗量も多くなるため、基礎代謝量が下がります。それに反して、冬は体を温めようとするために、基礎代謝量が上がります。基礎代謝とは、体温維持や内臓を動かすなど、生きていくために必要最低限の生命活動に使われるエネルギーのことです。今から、体を動かし始めることで、一日の消費エネルギーの7割を占める基礎代謝量を高くして、内臓の動きや血流も整えてゆきましょう。
その基礎代謝の内訳は筋肉による消費が約4割と、他の臓器に比べて大きいため、筋力トレーニングにより筋肉量を増やして基礎代謝量をあげることが近道ですが、他の方法もあります。深呼吸や自分に合った呼吸法を取り入れて心肺機能をあげる、入浴や食事により体温をあげる、食事時間や量を考慮することで胃腸の働きを良くする、充分な時間と良質な睡眠をとる、など少し気を付けることで体内臓器の働きが活発になり、基礎代謝量を上げることへつながりますので、これから来る冬に備えて、できることから取り入れてみましょう。
散歩が楽しい季節です。ほんの短い時ではありますが、Tシャツ一枚に薄い上着をはおり、軽快に歩ける秋です。歩き始めの空気は少し冷たくて、頬にあたる風はちくりと季節の移り変わりを告げ、乾いた大気の中、歩みも軽く「靴が鳴る」の気分。10分もあるくと、ホカホカしてきて、少し冷たい風が心地よく感じ、その心地良さが更に歩みを進めるのです。 目には青い空と秋の雲模様、黄色や赤く染まった広葉樹と、夏を超えた濃い様々な緑の針葉樹、水辺には水鳥たち、匂うはキンモクセイ、聴こえる音は葉擦れの重なりと水の流れ…、そんな、最高の秋の散歩はなんて素敵。
秋の散歩の楽しみにはもう一つ、栗拾いやキノコ狩りなどがあります。子供の頃、栗拾いに出かけたことがあります。栗畑にはまだ青い毬栗(いがくり)や毬(いが)が割れて実が見えているものがたくさん落ちていて、栗の木にもまだまだ落ちる順番が来ない柔らかそうな毬栗も多く生っていました。祖母に倣って、用意してもらった籠に次々と食べごろの栗を放り込み、もっと見つけたくなって、次の木へ次の木へと落ちた栗を追いかけてゆくと、「栗を追いかけてはいけません」との声。そして、祖母が教えてくれたことは、下を向いて夢中で栗を追いかけてしまうと、気づかぬうちに山の奥に入ってしまうから、とのこと。他にも、毬のある栗の実が落ちて、目にあたるといけない、ということから、「栗の木の下では空を仰ぎ見てはいけない」という言い伝えもあるそうです。今思い出すと、なるほど…、と思います。昔の人は経験から、いろいろな教えを残してくれているのですね。 その栗を持って帰ってきて、茹でていただいたり、栗金団(くりきんとん)を作ってもらったりしました。
栗は縁起物と言われています。栗の実を蒸して乾燥させ、殻と渋皮を取り除いたものを「搗栗(かちぐり)」と呼びますが、それが転じて、「勝ち栗」となり縁起を担ぐようになったといわれています。また、栗は種を植えてから木になり、実が生るまでには長い年月がかかるため、栗の実を食べれば永遠の命を手に入れることができると言い伝えられました。そして、栗の実を包む毬に鬼を退治するほどの魔除けの力があり、その毬に守られた栗の実を食べることで魔除けの身守り効果があるとも信じられたそうです。栗を使った代表料理、栗金団も縁起の良い食べ物と言われます。金団には、金の座布団や布団という意味があり、栗金団の色は黄金を連想させる、ということで縁起物となったそうです。お正月の定番となっていることもうなずけます。
週末の天気はどうかしら?久しぶりに栗拾いかな…、
などと、次の秋散歩を考えながら、そろそろ眠りにつこうと思います。
皆様、今夜もぐっすりお休みください。
染谷雅子
ガラス作家・アロマセラピスト
染谷雅子 ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com
作品名:「フュージンググラス帯留め 青毬栗」