パジャマに着替えて…集いの形

2022.12.26

パジャマに着替えて…集いの形

二十四節気は一年で最も昼が短く、夜が長くなる日、冬至(とうじ)を12月22日に迎えて、冬が深くなります。本格的な寒さに向かう頃です。七十二候は、乃東生(なつかれくさしょうず12月22日~26日)、麋角解(さわしかのつのおつる12月27日~31日)、雪下出麦(ゆきわたりてむぎのびる1月1日~5日)、と続きます。寒さが厳しくなる中、夏至の頃に花が黒くなり枯れたようになったウツボ草(乃東)はこの時期に新たな芽を出し、新しい角が生える準備として、立派に育った牡鹿の角は落ち、雪の下では麦が芽を出す、そんな候となります。繰り返し生き続ける自然界の営みは、最も寒いこの季節でも休むことなく動き続け、春の兆しをわずかに感じさせるのです。 牡鹿

この季節は、これからの寒さに備え、心身の養生が必要になります。年末年始の行事で、忙しい日々を送ることと思います。日頃の規則正しい生活習慣が崩れがちなりますし、食生活も乱れがちなります。ただ、大切な人たちと過ごす時間は、貴重な宝物です。ゆったりと、おしゃべりや食事を楽しむことも心の栄養となります。飲みすぎ、食べすぎに注意しながら、また、食べ過ぎた日の次の日は少し控えめにするなどの、調整をしながら、新しい年に向けての肯定的な気持ちで過ごせると良いですね。

ビール

おせち料理の準備は始められましたでしょうか?皆様、どんなおせち料理でお正月をお迎えですか?
おせち料理の歴史は、なんと、稲作が始まった弥生時代から。神に感謝するお供えだったと考えられます。奈良時代の宮廷では、暦に合わせ宮中神事として年に5回、御節供え(おせちそなえ)として、料理が作られました。江戸時代に入り、幕府の公式行事となり、庶民も節句料理として取り入れるようになり、さらに、江戸時代後半には、新しい年が始まる節句料理を正月料理として重箱に詰め、その食材、それぞれに意味を持たせるようになりました。おせち、という呼び名は戦後定着した言葉で、新しいものです。

おせち料理

紅白蒲鉾は厄除けと清浄を表し、黒豆は豆に暮らせますように、昆布巻きは養老昆布(よろこぶ)の語呂合わせ、栗きんとんは金の布団で幸運を呼びこむように。ブリやタイ、エビはそれぞれ出世やめでたさ、長寿を象徴し、紅白なますは水引を模しています。さらに、見通し良いレンコン、子孫繁栄を思わせるヤツガシラ、代々の繁栄を深く願うゴボウ、などなど、江戸時代の人々の豊かな語彙力と発想力に脱帽です。と共に、家族そろって、健康に歳を重ねてゆくことの難しさは今の比ではないということも、容易に想像できます。

おせち料理2

併せて、伝統文化として、お正月に歳神様を迎える縄飾りも、日本のお正月には欠かせないものです。古くは古事記に由来するものですが、もともと縄には神の領域を表す意味を持ち、さらに、その内側は清浄な守られた区域を表します。現在も縁起物として取り入れられています。年神さまが迷わず我が家にお越しいただけよう目印となるように、また、魔よけや守護、一緒に松竹梅やダイダイ、水引などを飾り付けることで、子孫繁栄や永遠、祝いの意味を持ちます。大きな縄飾りは取り入れにくくても、小さめの輪飾りや輪締めは取り入れやすいものです。

 

不思議だな、と思うのです。
クリスマス、皆様いかがお過ごしでしたか?きっと、クリスマスの飾りとして、クリスマスリースを飾った方も多いと思います。こちらも輪飾り。
日本の輪飾りは、神社で見かける大きなしめ縄飾りを家庭に招き入れるために簡略化したものです。そして、クリスマスのリースも、古代ローマ時代からの歴史を持ち、永遠、豊穣、魔よけ、などの意味を持ちます。
洋の東西問わず、長い歴史の中、人が安心や安全、豊穣や繁栄を望むとき、「輪」の形を作るのです。長さのあるもの、枝や紐などがあればその端と端をつなげばできる、一番簡単な形が輪ですが、それだけでなく、ここに、永遠や繁栄など、終わりのない、続くものを連想付けて神事や宗教へ導いた、昔の人の哲学はすごいな、と思うのです。そこからの積み重ねの歴史の果てに私たちは、今、常識として、「輪」=平和、愛、などのことを即座に想像できるのですから。

縄飾り

そして、輪は和へつながります。なごみの時を家族や大切な人とおせち料理を囲み過ごすお正月。幸福の形。いつまでも、そばにいて、永遠に続くことを心から祈るのです。
皆様も、どうか、穏やかな、和やかな、佳きお年をお迎えください。

部屋

と、そんな、昔の人が木の枝で作った最初の「輪」に、なにを思ったのかな・・・、なんて、思いを馳せながら、眠りにつきたいと思います。

今夜も、ぐっすりお休みください。

染谷雅子

 

 

 

ガラス作家・アロマセラピスト 染谷雅子
ギャラリーはなぶさ https://www.hanabusanipponya.com

作品名:「ガラスの和」

ガラス作品_ガラスの輪

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